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14m×8m(2020年7月現在)の編み地を使ったインスタレーションを展開し、会期中も編むことで変容を続ける。
大きな物を作ろうと思い立ち、12年前に編み始めた。何万回と繰り返す手編み特有の身体運動により、編みの工程ではトランス状態のような感覚になることも多い。そのため当初は編み地の拡張をコントロールする意識が希薄で、気がついた時には8畳の部屋に収まらなくなっていた。
そうして11年のあいだ様々な場所で展示をした。いつしか展示場所の環境に順応するための拡張や変形と、事故や経年で傷んだ際の補強や修繕が、編み地に手を加える理由になった。場所を移ろう、とある環境で経験をする、時が経つ、それらに応じて変化が生じる。まるで世の常をなぞるような仕組みが出来上がった。
川や海だった場所が陸地になったり、新品のTシャツが伸びきったパジャマになるがごとく、多くの事物は変わっていく。そして東日本大震災の後に私達が思い知ったように、ひとたび変わると「あの時と同じ」は二度とやって来ない。これらの事実が制作のソースになるとともに、編み地は変わり続けてきた。さて変わり続けた先には何があるのだろうか。はたまた変わらないものはあるのか。
BIWAKOビエンナーレの地でも、環境を取り込み取り込まれ、今は日々変わっていく。