ARTIST PROFILE アーティストプロフィール

北浦雄大

Kitaura Yudai
[ 日本 ]

MESSAGE

『異世界雲中菩薩』
「異世界転生」という言葉をサブカルチャーの世界で目にすることがある。
主人公は前世の記憶を有したまま、チートパワーを授かり、第二の人生をゲーム感覚で謳歌する。現代に生きる私達が望む都合の良い異世界の姿である。
人々は昔から異世界を作り上げてきた。仏教的世界においては人々が死後に赴く世界としての浄土がそれにあたる。平等院鳳凰堂はその一つであり、死後の世界に対しての安心感を得るために、異世界としての浄土空間を具現化したものと言え、その構成はメタバース空間に極めて近しい。
本作は「現代の浄土」をテーマとしている。チートアイテムを携えアニメ風に美化された「異世界雲中菩薩」が迎えにくる。
*チートとはイカサマ、ズルいの意味があるが、異世界転生ものでは異世界で有利に働く高い能力、強い力のことを言う。


『破壊されて陶片になったら転生した件』
作品に使用している陶片は完成し、窯から引き出されたものの、釉薬の表情の具合や他の陶片とくっつくなどして、当時の価値観では失敗とされ、すぐに破壊されたものを使用している。
それらの陶片達を僕の持つチートパワーで転生させた作品のシリーズである。
古来より、漆には接着剤としての歴史が長く、呼び継ぎもその一種である。
陶片を3Dスキャンし、パソコン上でなくなってしまった部分を補填し今生きる僕にできる呼び継ぎの技術で、異なる時間と空間を共存させたい。
*「呼継」とは、割れたり欠けたりした陶器に、まったく別の陶器の破片を継ぎ足して修復する「金継」の一種です。 金継が、割れた単一の陶器を修復して元の姿に近づけつつ、新たな風格を与える技術であるのに対し、呼継では、別の器の破片を組み合わせて修復し、新たな物語がそこに誕生します。

プロフィール

北浦雄大 [日本]

1994年奈良県生まれ。 2020年京都市立芸術大学大学院美術研究科漆工専攻修了。
漆は古くから、仏像や器など多種多様なものに用いられてきた。 長い歴史の中で自由自在に姿を変え、様々な素材と融合してきた漆とは、 私にとって、時代を越えて対話ができる唯一無二の存在である。 だから私は、時代を越えうる「安心感」をテーマに制作に取り組んでいる。 人間はこの世を生きる上で、人知の及ばないさまざまな事柄に対して「恐れ」を抱いてきた。この「恐れ」に折り合いをつけるために人間は、神や、 宗教といったものを作り出した。 救済されたいという願望に形を与え、 可視化することによって「安心感」が得られるのではないか。 現代の私たちも例外ではない。私は、人間の営みの中に生まれる「思いのかたち」を造形していきたいと考えている。

過去の作品