DIRECTOR’S
MESSAGE
ごあいさつ
BIWAKOビエンナーレ2025に向けて
全ては流転の波の中、
形を変えながら永遠の時を刻んでゆく。
本来なら、ビエンナーレは隔年開催ですので、2024年に第11回を迎える予定でした。ですが昨年は、プレBIWAKOビエンナーレ2025として、9月21日から12月8日まで上海で開催し、中国に向けたPRに力を入れました。今年は、なんといっても半世紀ぶりとなる大阪・関西万博の年。万博をきっかけに日本に訪れる方々にも、ぜひ滋賀にまで足を延ばしていただきたい—そんな想いもあって、ビエンナーレは今年に延期しての開催となりました。前回の万博EXPO70開催当時、まだまだ海外旅行が簡単ではなかった時代、見知らぬ国々への憧れや好奇心に胸膨らませた人々が連日訪れ、長蛇の列を成していたことを思い出します。今回の開催は、その時ほどの興奮は感じられませんが、当時SFの世界でしかなかったことが現実となっている今、時代の流れによる変化を見ることも楽しみの一つかもしれません。
2001年に始まったBIWAKOビエンナーレも今年11回目。近江八幡もそのメイン展示会場として続ける中で変貌を遂げています。始めた当初、江戸の風情を残す美しい町ではありましたが、放置された空き家が目立ち、ひっそりと寂しい様相でした。それが回を重ねるごとに徐々に空き家は、カフェやブティック、宿泊所などへと再活用されていくようになり、今は訪れる人々の笑顔でにぎわう町へと生まれ変わっています。江戸明治期に栄華を誇ったこの町が、また未来へと続く新たな道を見出し、活気ある町へと発展していくことに私たちも大きな喜びを感じています。
今回のテーマは、“流転”。
万物は変化してとどまることがありません。一個の個体と認識する私たち自身でさえ、細胞は常に死と再生を繰り返し、一瞬たりとも同じ自己ではあり得ません。私たち人類のみならずこの世に存在する全ての事象は、その生成変化を免れません。広大な宇宙でさえ、いっときも止まることなく変容し、やがて終焉を迎えるでしょう。しかし、死そのものが本当に終焉となるのかは誰にもわかりません。目に見えずともエネルギーそのものは消滅せず、形を変えてまた現れる、それは、町が再生を果たすように新たな生を刻み始めるのにも似ているように思います。
陰極まれば陽兆し、陽極まれば陰兆す。全ては形を変え流転の波の中にあるのかもしれません。
BIWAKOビエンナーレ2025では、そんな「流転」というテーマのもと、アートを通して変化のうねりを感じ、宇宙に想いを馳せる、ちょっと不思議で、とても豊かな時間をご用意しています。 この秋、ぜひ近江八幡の町へ。 心に残る旅のひとときを、一緒に過ごしましょう。 皆さまのお越しを、心よりお待ちしております。
総合ディレクター 中田 洋子
ディレクタープロフィール

中田 洋子 / NAKATA YOKO
京都に生まれ、2歳より滋賀県大津市で育つ。関西学院大学文学部美学科卒業後、同年、1980年ニューヨークに留学。1985年から1995年、マニラで事業を展開。1995年フランスに移住。故郷滋賀の豊かな歴史・文化・風土が失われていくことへの危惧を感じていた中、古い町並みを生かし、伝統文化を守りながら新しいものを融合させていくヨーロッパの街の在り方に感銘を受ける。2000年、エナジーフィールドを立ち上げる。フランスを拠点に世界各国のアートを見てきた経験を生かし、二拠点生活を送りながらBIWAKOビエンナーレを開催。2017年11月、完全帰国。時に残酷で利己的な側面を持つ人間。そんな人間の最も美しい側面は創造性と探求心であるとの信念のもと、現在も精力的に活動を行う。