BIWAKO BIENNALE 2022
起源〜ORIGIN
in Omihachiman & Hikone
2022年10月8日〜11月27日
(休館日未定)
次回は会場も増え、さらに充実した内容になるかと。お楽しみに!
過去の作品につきましは、この画面を閉じて2020年サイトをご覧くださいませ。
BIWAKOビエンナーレを始めてから20年という月日が流れました。これまで続けてこられたのは、数えきれないくらいの方々の支えがあってのことと本当に感謝の気持ちでいっぱいです。そしてこの節目にあたる年にCovid19という得体の知れないウィルスが、世界で猛威を振るうという状況に直面し、それも何か意味のあることなのかもしれないとさまざまに思いを巡らせています。
BIWAKOビエンナーレが、産声を上げた2001年、私自身、すでに海外生活が20年になっていました。ニューヨーク、マニラ、サンジェルマンアンレーと異なる文化を持つ国、町で生活する中、多くのことを学び、また感銘を受けることとなり、自身を育んでくれた故郷大津への思いが、募っていきました。幼少期を過ごした町というのは、皆さんもそうだと思いますが、格別なものがありますよね。なぜか海外で暮らすところも大津と似ているといいますか、都会の真ん中は、どうも落ち着かず、ミューヨークでは、低い町並みの続くブルックリンに、マニラもビジネスの中心街ではなく旧市街に、そして最も長く暮らすこととなったサンジェルマンアンレーもパリの郊外という、なんか、これって大津やん、というところに住んでいました。そうしたところがやはり落ち着くんですね。
でも、その故郷が、里帰りする度に変貌していくさまが哀しく、またその変貌の仕方自体にこれってどうなのかしら?という疑問もふつふつと胸に湧きあがり・・・。歴史を刻んできた古い日本家屋は消え、代わりに近代的な建物や駐車場が出現していくさまを見るのは、さみしくもあり、なんてもったいない、という気持ちでいっぱいでした。それに比べ、子供たちを育て上げ、22年間、住んだ町アンジェルマンアンレーはじめ、ヨーロッパは、どこも自身の町を大切にし守っています。その美しい町並みそのものにも感動しますが、そこに暮らす人々の頑ななまでに町並みを守り、後世に受け継いでいこうとする姿勢に心打たれました。
日本も特に京都、奈良、滋賀は、大した爆撃も受けず戦後ほぼ無傷で残っていたはずです。日本人自らの手で町を破壊してしまったことがなんとも悔やまれます。でも、まだ残る建物たちは残していきたいという思いもありアートがその介在になればと始めたのがBIWAKOビエンナーレでした。
また、初回2001年は、21世紀の幕開けでもあり、有史以来、同じ種であるにもかかわらず争いをやめない人類が、新たな世紀を迎え、そのカルマを乗り越え、他の生物たちも尊重するある意味進化した人類へと昇華していければ、という思いもありました。人類は、人類同士の争いのみならず、これまでにどれほど多くの種を絶滅へと追いやってきたことでしょう。そのような蛮行が、許されるはずがありません。今、猛威を振るっているCovid19 もそれを思うと人類への警告なのでは?と考えずにはおれません。
そして、アーティストは、世界の人々へと言葉ではない“作品“を通して、人類のあるべき姿、その存在理由を問いかけているのではないでしょうか?どれほどテクノロジーが発達しようとアート作品だけは、AIが生み出すことはできないはず。生み出せたとしてもそこに魂があるでしょうか?アートは、どこまでいっても人類誕生の時以来、少しも変わらない人間の本質、魂を具現化し、見る者に自身の奥深くに眠る魂の存在を知らしめる人類にとって最も大切な役目を担っていると私は思っています。
権力や名誉欲にまみれて自身の魂の存在を忘れてしまった人たちにもきっと作品を見ることで、気づきが生まれると信じたいですが、見る機会さえ持とうとしない人たちにCovid19は、必死の思いで警鐘を鳴らしているのかもしれませんね。
この類まれな美しい地球、私たち人類もこの母なる地球の上で、生かされている存在であり、他の生物たちと同等であるということを今一度胸に刻む必要があるのではないでしょうか。自己中心的な考えで、生態系を破壊した結果、コントロールできないウィルスが出現したのだということを肝に銘じてもいいのかもしれません。世界で多くの町が、ロックダウンされたとき、空は、海は、山は、川は、あるべき姿を取り戻し、その美しい姿に、多くの人々が、驚嘆するとともに喜びの声をあげていたことも忘れないでおきたいですね。これを契機に人類は、これまでとは違う未来像を描いていくことを願って止みません。
奇しくも今回のテーマは、“森羅万象~COSMIC DANCE”。パンデミックが起こる前に決めていたテーマです。この世のすべてのものは、ひとときもとどまることなく、変化と生成を繰り返し、ダイナミックなエネルギーの場を創り上げています。今回も、作家たちは、テーマをもとに“BIWAKOビエンナーレ”という壮大な作品を築き上げます。そしてそれは、お越しいただく皆さまの参加をみて初めて完成へと導かれる世界なのです。ともに創造の喜びを分かち合い、心の底から湧き上がる感動を地球、そして宇宙とともに舞うがごとく享受していただければ幸いです。
京都に生まれ、2歳より滋賀県大津市に育つ。関西学院大学文学部美学科卒業後、同年、1980年ニューヨークに留学。1985年から1995年マニラで事業を展開。1995年フランスに移住。故郷滋賀の豊かな歴史・文化・風土が失われていくことへの危惧を感じていた中、古い町並みを生かし、伝統文化を守りながら新しいものを融合させていくヨーロッパの街の在り方に感銘を受ける。2000年、エナジーフィールドを立ち上げ。フランスを拠点に世界各国のアートを見てきた経験を生かし、二拠点生活を送りながらBIWAKOビエンナーレを開催。2017年11月、完全帰国。時に残酷で利己的な側面を持つ人間。そんな人間の最も美しい側面は創造性と探求心であるとの信念のもと、現在も精力的に活動を行う。